平成15年度公開講座 (この講座は終了いたしました)


旅の博物学 -観光、巡礼、渡り鳥-

                  元木幸一 (山形大学附属博物館館長)

 さて皆さん、奥の細道を旅しなかった芭蕉さん、土佐に行かなかった紀貫之さん、全国色修行に出なかった在原業平さん、東海道を歩かなかった弥次さん、喜多さん、・・・なんて考えられますか。また、ジュール・ヴェルヌさんが80日間世界一周を書かなかったらどうでしょう。あるいは素晴らしい旅行をしなかった風船なんて・・・(昔「素晴らしい風船旅行」という実に楽しい映画があったのです)。旅は芸術を生み出す源泉の一つです。

 
宗教にとっても、巡礼という旅は大事ですよね。仏教でも、キリスト教でも、イスラム教でも、人々は聖地を目指して、そして聖地を巡ってひたすら歩きます。

 
そして、近代の空想作家は、宇宙への旅を夢見ました。宇宙旅行が現実のものとなった現代でさえも(とはいっても範囲はまだまだ狭いですよね)、映画でも、小説でも、宇宙旅行への想像力はつきません。今年になって、国立博物館で「スター・ウォーズ」の展覧会が開かれているのも、旅の空想力を考え直してみたいからではないでしょうか。

 
どうして人間は旅をし、旅を思索し、想像し、旅をめぐって創造するのでしょうか。

 
いや、旅は人間だけのものなのでしょうか。この公開講座では、他の生き物の旅も探ってみたいのです。渡り鳥は、回遊魚は、蟻は、蜂はどのような旅をするのでしょう。他の生き物の旅も気になりませんか。

 
このように様々な旅を考えてみましょう。人間の旅の様々な姿や、旅が文化に与えたものが明らかになるかもしれませんよ。私たちの公開講座が、楽しい思索への心の旅になればと思っています。

開催期間  平成15年10月11日、18日、25日の各土曜日 計3回

        毎回2講座(1講座90分)13:30〜16:40

会場     山形大学人文学部3号館2F CALLラボ教室

募集人員  30名

講師及び演題

1回目 13:00〜15:00
旅の空の芸術家たち
山形大学助教授 阿部成樹
15:10〜16:40
スパイか、巡礼か?-中世の画家ヤン・ファン・エイクの<秘密旅行>-
山形大学教授  元木幸一
2回目 13:30〜15:00
お伊勢参りの旅-江戸時代の遠距離旅行の記録から-
山形大学助教授 岩鼻通明
15:10〜16:40
2003年映画の旅〜リュミエール兄弟から「千と千尋の神隠し」まで〜
山形大学教授 阿部宏慈
3回目 13:30〜15:00
いきものの旅
山形大学教授 小田隆治
15:10〜16:40
文学の中の旅人たち-プレ芭蕉・ポスト芭蕉-
明海大学教授 山本陽史

報告

10月初旬から博物館主催の公開講座が3回にわたって開催されました。今回は「旅」をテーマに、西洋の芸術家の旅行や日本文学の中の旅、渡り鳥などの動物の旅に至るまで、幅広い内容で旅について考察してみました。国民文化祭にもかかわらず、大勢のお客様にお越しいただきました。ここで、スタッフに届いたお客様の声をご紹介します。

  ・ 耳だけでなく、スライドやビデオを使うなど、目でも楽しめる内容でよかった。

  ・ イタリアに行きたくなった。イタリアで生まれ変わりたい。

  ・ 岩鼻先生の「お伊勢参りの旅」、大変わかりやすい話し方で、老齢にはうれしい。

  ・ 美術関係の講座がなかなか開催されないので、うれしかった。

  ・ 山本節に酔わされました。

  ・ 各講師の、ご本人曰く「脱線」というよりは、「博識ぶり」に感動。

  ・ こういう講義がうけられるのだったら、学生に戻りたい。

  ・ 受講料の価値、大いにあり。

 以上のような感想をいただきました。来年も面白い企画を立てて、皆様をお迎えしたいと思います。

  

阿部宏慈先生「2003年映画の旅」と題する講座の様子です。歌あり、笑いありの楽しいひとときでした。講座のあと、レンタルビデオをどっさり借りて映画に浸ったお客様もいたようです。 修了式の様子です。受講者代表の方に、館長から修了証書をお渡ししました。
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